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【コーヒー対談】世界チャンピオン粕谷哲さんと16歳の焙煎士岩野響さんが出会った。

【コーヒー対談】世界チャンピオン粕谷哲さんと16歳の焙煎士岩野響さんが出会った。

キッチン 2763
2018年11月01日 (木)

自宅やお店でコーヒーを楽しむ人たちが増える昨今、コーヒー業界の中で注目を集める二人がいます。2016年に世界一のバリスタに輝いた粕谷哲さん。そして、15歳という若さでコーヒーの焙煎士をはじめた岩野響さん。今回、粕谷さんのお店「フィロコフィア」に岩野さんをお迎えしての対談が実現しました!司会はお二人の大ファンでもある東急ハンズ新宿店「一杯の珈琲商店」店主の向井。お二人が考えるおいしいコーヒー、そして一杯のコーヒーに込めた想いとは?

偶然の出会いからはじまった、コーヒーとのつながり。

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今回の司会進行は、「一杯の珈琲店主」向井。少し緊張気味。

向井:きょうはお時間いただきありがとうございます。私自身も、今日のお二人の対談を楽しみにしてきました。最初に自己紹介がわりに、お二人がコーヒーに興味を持つきっかけを教えていただけたらと。

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世界チャンピオンになったこともある、粕谷哲さん。今回の対談は、船橋市にある粕谷さんのお店「フィロコフィア」で行われました。

粕谷:6年前に1型糖尿病に突然なりまして。糖分を摂取しないようにといわれて何が飲めるんだろうと検索したら、コーヒーというのがgoogleの答えだった(笑)それがきっかけですね。

それまではITコンサルタントをやっていたのですが、入院したらいきなり一日中ヒマになってしまって。それでコーヒーを自分で淹れてみようと思って、近くにあった自家焙煎店「サザコーヒー」に行って道具を一式買って、淹れ方も全部教わりました。でも、病室で淹れてみたら全然美味しくなくて。でも、その美味しくならないことがすごく面白くて、そこからどうしたら美味しくなるのかなということに興味を持ち始めて、今もずっと考えている感じです。

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群馬県、桐生市で焙煎所「ホライズンラボ」を営む岩野さん。弱冠16歳。

岩野:僕は、小さいころ学校などの集団生活になじめなかったんですね。それで両親にいわれて学校を休んでいたのですが、そうしたら自分の居場所がなくなってしまったことに気づいて。そこで、社会とつながれるものってなんだろうと探していた時に、たまたまコーヒーと出会ったんです。

もともとコーヒーは好きだし、周りにコーヒーに詳しい人もいたので、じゃあ深くやってみようかと。それがきっかけですね。最初は淹れるところから始めたのですが、焙煎については、たまたま知り合った方に小さな手回しの焙煎機をいただいて、それがスタートですね。その日すぐに焙煎してみたんですけど全然美味しいコーヒーができなくて、どうしたら自分の好きな味がつくれるんだろうと研究を続けてきて、今に至るという感じです。

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ここで粕谷さんの焙煎したフィロコフィアのコーヒーが登場。美味しそうです。

粕谷:たまたま出会ったこともそうだけど、なんだか似てますね(笑)

岩野:そうですね(笑)

粕谷:実は、今回の対談は僕がしたいといって向井さんにお願いしたんですよ。

岩野:本当ですか?ありがとうございます。

粕谷:すごく楽しそうにコーヒーに取り組んでいるので、お話を聞いてみたくて。

向井:私も今回のお話を粕谷さんにもらったとき、「キタ!」って密かに興奮していました(笑)

それぞれのコーヒーづくり、目指す味について。

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向井:先日、岩野さんの焙煎所にお邪魔させてもらいまして、粕谷さんのコーヒーを飲んでいただいたんですが、改めてその感想をいただけますか。

岩野:浅煎りに近い豆だけど深煎りの要素もあって、今まで飲んだことがないなと感動しました。僕は主に深煎りをつくっているので、その分違いが際立って感じたといいますか。

向井:粕谷さんも岩野さんのコーヒーを飲まれましたか?

粕谷:飲みました。岩野さんの深煎りの豆はちゃんと苦いんだけど、いやな苦味じゃないというか。甘みが下支えしてるのかなと。個人的な話ですけど、いま浅煎りが好きな人に深煎りの魅力を伝えたいと思っていて。岩野さんのコーヒーなら、それができるんじゃないかなと感じましたね。

向井:これまでお話した中で、お二人ともにコーヒーの味わいの中でも甘みにこだわられていると思うのですが、理由を教えてもらえますか。

粕谷:これまで飲んだコーヒーで、美味しいと感じたのが甘みのあるコーヒーだったからです。苦いか酸っぱいかに寄りがちなコーヒーの味に、甘みが加わることでまとまるというか。そんな風に自分は感じていますね。

岩野:僕は昔から喫茶店文化が好きで、そこに寄り添っているコーヒーが深煎りの中に甘みがある味をベースにしていたところがありますね。なので、自分でつくるコーヒーも、甘さと全てのバランスが整ったコーヒーにしたいなと。

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向井:一方で、淹れ方や焙煎の仕方については、お二人それぞれのスタンスが対照的だなとも思っていまして。粕谷さんはロジック、岩野さんは感覚といいますか。

岩野:僕は焙煎ごとのデータをノートにつけたり、プロファイル(焙煎のレシピ)を使った焙煎を試した上で、自分としては感覚を大切にする方法があっているなと思って。最初に手回しの焙煎機ではじめたこともあってか、焙煎の度合いや香りを自分で見てコントロールした方がやりやすいんですよね。もちろん、それがいいかどうかはまだわからないんですけど。

粕谷わからないですよね。実は僕も、自分で淹れるときは基本的に感覚です。僕が発表した4:6メソッド(※)は淹れ方を数値化したものですけど、実際はあの工程の中にも余白があって、そこには感覚的なものも含まれています。その感覚の部分をできるだけなくして、多くの人に公開できる、使ってもらえる状態にしているのがあの形ということなんですよ。

岩野:いろんな人にわかってもらうためには、感覚的だと伝わりきらないところもありますしね。

粕谷:そうなんです。僕がロジックを大切にする理由は、みんなが美味しくコーヒーを淹れられるように、というところが目的なので。それとやっぱり僕はコーヒーを通じて何かを伝えたい気持ちがあるので、その方法の一つが4:6メソッドであるというだけで。何かしら、コーヒーに携わってる人は同じ気持ちを持っていると思っていて、その表現はそれぞれ違っていいんじゃないかなと思いますね。

岩野:それがコーヒーのいいところですよね。

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向井:お二人のお話を伺っていると、つくり方はそれぞれだけど、コーヒーに対する根っこの部分は共通している感じを受けますね。

岩野:これは僕の考えですが、本当にいろんなつくり方や売り方があっていいのがコーヒーで、その自由度があったからこそ、悩んでいた僕もすんなり受け入れられた部分があると思っています。飲み方だって、家でゆっくりでもいいですし、お店に立ち寄って飲んでもいいわけですから。

粕谷:自由度高いし、敷居も低い。バーテンダーのように資格があるわけじゃなくて、コーヒーの世界はバリスタも焙煎士も名乗ればいいわけですから。要は、誰でも楽しんでいいと。

岩野:でも敷居が低い割に奥深いというか、そこがまた面白いところだなあと思います。

粕谷:敷居を簡単にまたがせておいて、そこが沼地になっているというね(笑)

人の心を動かすコーヒーとは?

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粕谷:今、岩野くんはおいくつなんですか?

岩野:年齢は16歳です。

粕谷:やばいな(笑)

岩野:いや、なのであまり社会経験がなくて...。

粕谷:それ言ったら僕もあまりないですよ(笑)

向井:私が岩野さんとお話して驚かされるのは、すべて自分の経験から発言されているところ。社会経験は関係なくて、感心どころか尊敬しますね。

粕谷:それはすごく大事ですよね。自分で検証して理解するっていう。岩野くんにも大会に出てほしいくらい(笑)。大会でなくてもプレゼンする機会を設けてほしい。もっとみんなに知ってほしいですね。

向井:ここでお二人に質問なんですけど、味がよいコーヒーは理詰めでつくれるのかもしれないんですが、人の心を動かすコーヒーはどうやったらつくれるんでしょうか。最近すごく興味があって。

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岩野:個人的な考えですけど、味はもちろん、コーヒーを手に取る時間がその人の人生を豊かにするんじゃないかなと思っていて。目に見えない部分もその味わいの一部なのかなと。僕自身もコーヒー片手に考えている時間が心地よかったりしていたものですから。いったん立ち止まって、これまでやこれからのことを考える、そういう時間に寄り添うコーヒーが、きっと心に届く一杯なんじゃないかなと思います。

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粕谷:僕が好きなのは人が淹れてくれたコーヒーなんですけど、それはホスピタリティを感じるということもあるのですが、自分で淹れたコーヒーはどうしても粗探ししちゃうということもあって(笑)

岩野:休まらないみたいな。

粕谷:そうそう。まあ、コーヒーを飲む時間は間違いなくいいものなんですけど(笑)。世の中にいろいろな飲み物がある中で、心を動かすって意味とつながるかはわかりませんが、コーヒーそのものがハートウォーミングな、あったかい飲み物なんじゃないかと。お店でお客さんを見ていても、コーヒー飲んでいる時って誰も嫌な気持ちじゃないと思うんですよね。近頃は、自分もそんなことを考えながら飲んでいます。

向井:その時は、どなたかに淹れてもらうんですか?

粕谷:いや、自分で淹れていますよ。今は適当に淹れるのが自分の中で流行っていて(笑)。新しい発見があったら面白いなと。今は、焙煎も悩みながらやっていますけど、そのモヤモヤが楽しかったりして。

向井:やっぱり、その悩みを楽しむくらいじゃないと。

粕谷:そうですね。楽しめている方なら、大抵美味しいコーヒーをつくれているんじゃないかなと。最近そう思いますね。

人それぞれに、おいしいコーヒーがあっていい。

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向井:今、多様性の社会なんて耳にしますが、これまでお話を伺って、コーヒーの世界もまさにそうなんですね。

粕谷:一緒だと思いますよ。さっき岩野くんがいったみたいに自由度が高いこともあるし、それは多様性が豊かであるということでもあると思います。深煎りがあってもいいし、浅煎りがあってもいい。明確な意思をもってこの仕事をしてもいいし、なくてもいい。ただ、コーヒーを楽しめればいいみたいな。

向井:そんな中で、美味しいコーヒーに定義ってあるんでしょうか。

粕谷:自分の中では、飲んだ時においしいと思ったかどうかだけで(笑)。岩野くんはどう思います?

岩野:難しいですよね。直感的に、自分にあってると思えば、それが美味しいコーヒーなのかも。それは味もそうですし、お店の雰囲気なども含まれてくるとは思うんですが。

粕谷:まったく同じ人と空間があったとしても、その日の天気で美味しさは変わってくるし、淹れる人の感情によっても変わるし。僕が美味しいと思っても、そう思わない人はいっぱいいますし。コーヒーはそれでいいんだと思います。

そして、二人の挑戦は続いていく。

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向井:最後に、お互いに聞きたいことなどはありますか?

粕谷:岩野くんはあと70年くらい生きるじゃないですか(笑)。死ぬまでコーヒーに携わっていると思いますか?

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岩野:あー(笑)。それは難しい質問ですね。今は自分を表現するのに一番フィットしていると思うんですけど。正直わかりませんね。

粕谷:僕も全く同じで(笑)。他にはまることがあったらそっちに行ったらいいと思ってますし。

向井:それでまた世界チャンピオンになると(笑)。

粕谷:岩野くんはイベントにも出店してるじゃないですか。感想としてどうですか。

岩野:イベントは、今まで知らなかった情報だったり、人だったりに触れられるので、最近は積極的に参加するようにしています。コーヒーを通じていろんな方に刺激を受けて学ぶ。そんな挑戦の場でもあると感じています。

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粕谷:この先の目標とかはあるんですか?

岩野:やっぱりこれからもどんどんチャレンジすることでしょうか。全く英語はできないけれど海外のイベントにも出てみたり(笑)。

粕谷:イエスとノーとサンキューが言えれば大丈夫ですよ(笑)

岩野:僕からすれば、粕谷さんのほうが大会へのチャレンジとか、自分のできないことに挑戦していてすごいなと思います。

粕谷:でも大会前は毎日出たくないって言ってたんですよ(笑)。でも僕も、できることに挑戦しても仕方ないと思う方だから。難しいことをやってこそかなと。

向井:私も、一ファンとしてお二人のさらなる挑戦を楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました!

おわりに

終始和やかな雰囲気の中、進んだ対談。お二人ともやわらかい雰囲気をもった方だったのですが、発言の端々には、コーヒーに対する真摯な想いやひたむきさ、それぞれの強い信念を感じました。みなさんもぜひ一度、お二人のつくるおいしいコーヒーを味わってみてはいかがでしょうか。

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今回お邪魔したフィロコフィア。店内には、コーヒーのよい香りが漂っていました。

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豆の選別から焙煎、そしてドリップに至るまで、丁寧な仕事からおいしい一杯は生まれます

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お店のカウンターで話に熱の入る粕谷さん。岩野さんも真剣な表情で耳を傾けていました

(※)コーヒーを淹れる際に、総湯量を40%と60%に分ける、粕谷さんが開発したオリジナルの抽出方法。くわしくはこちら>>

粕谷哲さんのお店「フィロコフィア」

岩野響さんのお店「ホライズンラボ」
※店舗は閉鎖中です。豆は東急ハンズ新宿店にて販売しています。

※掲載商品は一部店舗では取り扱いがない場合がございます。取り扱い状況については各店舗へお問い合わせください。
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